中富良野保育園

建築概要
受賞歴 掲載誌
設計主旨
北海道・富良野川の畔、十勝岳連峰を望む地に建つ140人の子どものための保育園。広大で時として厳しい自然の中で、保育園は親しみやすい「家」であり、内側を守る「砦」であり、ときめきが感じられる「町」であってほしいと考えました。そこから存在感のある五つの「家」=保育室が、大平原の中に仲良く建ち並ぶ姿が浮かびあがってきました。
ひとつひとつの「家」は、大きく突き出した特徴的な屋根と窓によって、周囲にその存在を主張する形にしました。その保育室を川への広がりが生まれるように雁行しながら並べることで、ひとつひとつの「家」が際立ちつつ、集まった姿が一つの世界を醸し出すように意図しました。
この保育園では、子どもが自分の関心に応じて自由に遊びを展開できる「自由保育」をとり入れていて、保育室内で様々な遊びが同時展開します。それに応えられる空間として、一つながりでありながら、いくつかの雰囲気の異なる場を合わせ持つ保育空間をめざしました。部屋の中央には、高窓に向かって斜めに天井が伸び上がる動きのある空間、その廻りを天井の低い落ち着きある場で取り囲みました。さらに斜め天井の下に水平梁を飛び交わし、大きな空間内に区切りを感じさせることで、大小様々な場が生まれるようにしました。また各室備え付けの個人ロッカーゾーンやトイレ室の配置を工夫することで、コーナーが多く奥行きのある保育空間にしていきました。
多目的室は、遊戯・運動と共に午睡の場ともなるため、活動・睡眠という相反する2つの特性に呼応する必要がありました。そこで平面の形を、動きを誘発しつつ包み込む特性を持つ楕円にし、その上に、斜めに天井をのせることで、高さを感じつつも落ち着く空間にしました。
雁行する保育室と楕円形の多目的室との間に生まれる不定型な通路空間は、天窓から自然光を落とすことで、明るく変化のある街角のような空間にしました。ここを行き来する中で、子どもたちの内面がさらに生きる喜びに輝くことを願っています。

KJ/建設ジャーナル」 2009年8月号掲載
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