日本橋-川辺の家

建築概要
掲載誌
設計主旨
都心の河川に面する建坪13坪の家です。
川に向かって開放的にリビングを展開し、吹抜の大開口から、外の景色が視界に飛び込むようにしました。
4階の子ども室をリビングに対して開放的につくり、川の景色を吹抜越しに楽しむことができるようにしました。
1階は賃貸用駐車場3台を確保するため、宙に浮いたような外観となっています。

投影図

東京・日本橋。かつての水の都は、いまもゆったりと流れる川面がビル街に安らぎをもたらしている。この家はそんな都会の川の畔に建つ。小さいながら、水辺のゆとりをそのまま体感できる住宅としたい。そんな思いを持って設計に向かった。
 建てられる広さは13坪、川以外の3方はビルが並ぶ。その可能な広さいっぱいに、3方を閉じ南面する川に向かう面のみを全面開口した直方体を立ち上げた。それをそのまま宙に持ち上げることで、1階を北側道路から川まで視線が通るオープンスペースとした。直方体の内側には、2階に閉じた個室を配し、対照的に3・4階は開放的な一室空間にした。川の大らかなスケールと呼応するように、一室空間の3階川側に2層の天井高さを持つLDを配置した。川に面する全面ガラスの大開口からは、川面から空まで一続きの景色が視界に飛び込み、サッシを開け放つと川に向かってテラスが一体に繋がる。水辺の空気がそのまま室内に満ちてくるような空間を展開した。LDの奥にキッチン、4階にはLD吹抜に向かって子供室を設け、様々な角度から川の景色を楽しめるようにした。
 一室空間としてつながりを感じつつも、各スペースにはその場にふさわしい雰囲気を与えたいと考えた。4階子供室は独立性を高めるため、外郭の直方体に中に一回り小さな四角の空間を吊り下げ、天井もLDより頭一つ高くした。さらに、LD吹抜との境を厚みのある家具で仕切ることで、視界が抜けつつも包まれた安心の感じられる場とした。このボックス家具に照明・換気ダクト・空調などの設備機器を集中させ、素材も肌合いの柔らかな木質とすることで、モノトーンの直方体の中に、細やかな生活の息吹をもたらす役を担わせた。
 また、明るく開放的なLDに比して薄暗く感じられがちな奥のスペースに独自の光と風を導こうと、外郭の直方体を切り抜き、外部空間を挿入していった。3階浴室前には4階まで貫いて坪庭をくりぬいた。トイレは距離感を生み出すため「離れ」のように坪庭を通って入る構成にした。4階では、外郭と子供室との間にテラスを挟むことで、柔らかな間接光に子供室が包まれるようにした。  大らかな水辺の風情を感じながら、この住宅の中で住み手の内面がゆったりと育まれることを願っている。

(住宅特集2007年6月号掲載)
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