青谷福音ルーテル教会

建築概要
掲載誌
設計主旨
 青谷福音ルーテル教会(青谷教会)の特徴は礼拝堂にあります。正三角形の各辺が円弧状にふくらんだ平面形をしています。なぜ礼拝堂をこのような形にしたのか。それは、礼拝堂空間に必要な2つのことを追求する中から生まれました。一つは、しっかりと守られた安心が感じられること、もう一つは、心が内から外へと導かれ、解き放たれることです。この対照的な2つの特性に応えられるのが正三角形の平面でした。
 三角形の一つの頂点を入口にすると、入口は門のように絞られるので、外から内部がしっかりと守られていることを実感できます。内側に入ると、末広がりに奥へいくほど広くなるため、心が解放されていきます。しっかりと守られている感覚を深めるため、正三角形の各辺をふくらませて、包まれた安心が感じられるようにしました。中央通路に沿って一直線に天窓を設けることで、聖壇へと進む人の心を導くようにしました。正面聖壇は天空からの光で満たし、心が解き放たれる空間としました。正面壁の中央に十字架を穿ち、光が十字を描き出すことで、心がさらに大きな世界へと向かってほしいと考えました。
 この礼拝堂を中心に、建築全体を組み立てていきました。小礼拝堂、祈祷室を祈りのための特別な場と捉え、礼拝堂の正三角形の軸線上の重要な場所に配置しました。礼拝堂とともに道からよく見える小礼拝堂は、正三角形平面の上に斜め屋根をのせた四角錐の鋭い造型にすることで、大らかに曲面を描く礼拝堂と対比し、ひきたて合う造型を意図しました。この明確な形を持つ2つの祈りの場の間は、ガラス張りの開放的な空間として、教会活動のための場を配しました。道ゆく人に、活動の雰囲気が伝わればと考えてのことです。
 青谷教会の周囲には、教会関連施設が建ち並んでいます。その四角い建物群の中にこの三角形平面の建物をおくと、間に様々な形の外部が生まれます。そこを広場として生かすことで、外部環境を充実させていきました。そして正三角形、円弧という求心性の強い造型を持つ礼拝堂の生み出す存在感が、教会施設群全体を統合する核となることで、まとまりある地域環境を形成できればと考えています。
         「KJ/建設ジャーナル」 2009年8月号掲載

■投影図

■3階 平面図

■2階 平面図

■1階 平面図

■配置図

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