山に向かう家

建築概要
掲載誌
設計主旨
東に山が迫る山のふもとに建つ、夫婦と3人の子どものための家です。
南は、海を遠くに望めるが眼前には高速道路が横切ります。この場所では、周囲の自然を取り入れつつ、高速道路の存在を感じさせない、半ば開き半ば閉じるような住空間がふさわしいと考えました。
中央に大きな吹抜のリビング、それを取り巻くように各部屋を配置しました。リビングの吹抜天井を山に向かって急勾配で持ち上げることで、山の緑のボリュームが空から目に飛び込んでくるようにしました。小部屋(サンルーム)をリビング吹抜の南側上部に吊り下げ、高速道路の存在を遮蔽するようにしました。2階はリビング吹抜に面して子どもたちのための大きなカウンターを設け、一人一人が自分の席において独立した落ち着きが感じられるように、急勾配の天井や、斜めにはり出すサンルームによって、リビングの大空間を適度に分節していきました。
リビング全体を見渡そうとすると、急勾配の壁や天井が視界を斜めに遮ります。同時に遮られない残りの部分から奥へと視線が導かれていきます。こうして遮られた視界とつながった視界とが斜線を境にパッチワークのように組み重なっていきます。木立、岩などによって視界が見え隠れすることで先へと心が誘われていく山での体験にも通ずるこの建築空間の中で、住み手の心が、日々新しい世界を感じつつ、豊かに育まれていくことを願っています。
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